遠方で家族が亡くなった場合、ご遺族がまず直面するのが「ご遺体をどうやって地元に連れて帰るか」という、非常に重く、そして現実的な問題です。深い悲しみの中、冷静な判断が難しい状況ですが、いくつかの方法とその注意点を事前に知っておくことで、落ち着いて対処することができます。ご遺体の長距離搬送には、主に「寝台車(陸路)」と「空輸(飛行機)」の二つの方法があります。どちらを選ぶかは、距離や費用、時間的な制約などを考慮して決定します。まず「寝台車」による搬送ですが、これは葬儀社が手配する専用車両で、陸路をご自宅や希望の安置場所までお連れする方法です。数百キロ程度の距離であれば、最も一般的な選択肢と言えるでしょう。費用は、走行距離に応じて加算されていくのが基本で、深夜や早朝の割増料金、高速道路料金などが別途かかることもあります。寝台車での搬送の利点は、ご遺族が同乗できる場合が多く、故人様と離れることなく移動できる点です。一方、かなりの長距離になると、ドライバーの交代が必要になったり、時間がかかったりするため、費用も高額になります。次に「空輸」ですが、これは千キロを超えるような長距離の場合に検討される方法です。ご遺体を棺に納め、航空会社の貨物便として搬送します。この場合、個人で手続きすることは非常に難しく、空港での手続きや搬送に精通した葬儀社に依頼するのが一般的です。費用は、航空運賃に加え、空港までの寝台車料金、空輸専用の梱包費用、各種手続き料などがかかります。空輸の最大の注意点は、ご遺族は同じ飛行機に同乗できても、貨物室のご遺体とは別の扱いになるという点です。また、天候によってフライトが遅延・欠航するリスクも考慮しなければなりません。どちらの方法を選ぶにしても、絶対に不可欠なのが「死亡診断書(死体検案書)」です。この書類がなければ、ご遺体を移動させることは法律で禁じられています。常に原本を携帯し、紛失しないよう厳重に管理する必要があります。突然の事態に動揺するのは当然ですが、まずは現地の葬儀社に連絡し、専門家のアドバイスを受けながら、最適な搬送方法を冷静に選択することが、故人様を安らかに故郷へお連れするための最も確実な道筋となります。
ご遺体の長距離搬送、その方法と注意点