三年ほど前、長年連れ添った母を亡くし、気落ちしていた父が、後を追うように突然倒れ、帰らぬ人となりました。私は一人っ子で、頼れる兄弟もいません。深い悲しみと、これから一人で父を見送らなければならないという途方もない不安に押しつぶされそうでした。父は退職後、国民健康保険に加入していましたが、まとまった貯蓄はほとんど残していませんでした。私の手元にあるお金も限られており、葬儀費用をどう捻出しようかと、目の前が真っ暗になりました。そんな私を救ってくれたのが、葬儀社の担当プランナーの方でした。打ち合わせの際、費用のことで私が思い悩んでいるのを察してか、彼は静かにこう切り出しました。「お父様は国民健康保険にご加入だったのですね。でしたら、市区町村から『葬祭費』として補助金が支給されますよ」。補助金?そんな制度があるなんて、私は全く知りませんでした。彼は続けて、「自治体によって金額は異なりますが、この地域ですと五万円が支給されるはずです。申請が必要ですが、手続きはそれほど難しくありません」と、丁寧に教えてくれたのです。その言葉は、暗闇の中で見つけた一筋の光のようでした。五万円という金額は、葬儀費用全体から見れば一部に過ぎません。しかし、精神的に追い詰められていた私にとって、その五万円は金額以上の、大きな心の支えとなりました。「少しでも、足しになるものがある」。そう思えただけで、不思議と心が軽くなったのです。葬儀を終え、少し落ち着いてから、私はプランナーさんに教わった通り、市役所へ向かいました。葬儀の領収書や父の保険証など、言われた書類を持って窓口へ行くと、手続きは驚くほどスムーズに進みました。職員の方も親切で、申請書の書き方を丁寧に教えてくれました。そして数週間後、私の口座に五万円が振り込まれているのを確認した時、改めて父がこの社会の一員として生きてきた証なのだと感じ、胸が熱くなりました。もし、あの時プランナーさんが一言教えてくれなかったら、私はこの制度を知らないまま、二年という申請期限を過ぎてしまっていたかもしれません。知識は、時に人を救います。そして、専門家の助言がいかに大切かということを、私は父の葬儀を通して、身をもって学んだのです。