遠く離れた地で家族が亡くなった時、ご遺族は「お葬式をどこで行うべきか」という大きな決断を迫られます。亡くなった場所(現地)で行うのか、それとも故人が長年暮らした地元に連れて帰ってから行うのか。それぞれに利点と課題があり、故人の遺志やご遺族の状況、地域の慣習などを総合的に考えて、最善の形を選択する必要があります。一つの選択肢は、「現地で火葬までを済ませ、お骨になってから地元に戻り、本葬(骨葬)を行う」という方法です。この方法の最大のメリットは、ご遺体の長距離搬送にかかる高額な費用と、ご遺体の状態を保つための時間的な制約から解放されることです。現地では、ごく近しい家族だけで火葬式(直葬)を行い、静かに故人を見送ります。そして後日、地元で改めて親族や友人・知人を招いて、お骨を祭壇に安置して葬儀・告別式を執り行うのです。これにより、地元の多くの方々にもきちんとお別れの機会を提供できます。一方で、地元の縁故者の方々が、生前の姿の故人と最後のお別れをすることができない、という点がデメリットとして挙げられます。もう一つの選択肢は、「ご遺体を地元まで搬送し、地元で通常通りに葬儀を行う」という方法です。この場合、長距離のご遺体搬送費用がかかり、日程的にもタイトになりますが、多くの縁故者が故人と直接対面し、お顔を見てお別れができるという、何にも代えがたい利点があります。故人が地元に強い繋がりを持っていた場合や、「最後は故郷の土で眠らせてあげたい」というご遺族の想いが強い場合に選ばれることが多いようです。どちらの選択が正しいという答えはありません。判断に迷った時は、いくつかの点を考慮すると良いでしょう。まず、故人が生前に希望を語っていなかったか。エンディングノートなどに記されていることもあります。次に、ご遺族や主要な親族がどこに住んでおり、どちらの場所の方が集まりやすいか。そして、葬儀全体の費用をどの程度に抑えたいか。これらの要素を家族や親族間でよく話し合い、全員が納得できる形を見つけることが何よりも大切です。葬儀の場所を選ぶことは、故人をどのように送り、そして残された者たちがどのように悲しみと向き合っていくかを決める、非常に重要なプロセスなのです。