大切な家族との最後のお別れの儀式である葬儀。しかし、その一方で、葬儀には多額の費用がかかるという現実的な問題が伴います。一般的に、葬儀費用は全国平均で百万円を超えるとも言われ、突然の出費にご遺族が頭を悩ませるケースは少なくありません。深い悲しみの中で、金銭的な心配まで抱えなければならないのは、非常に大きな負担です。しかし、あまり知られていませんが、この経済的な負担を軽減するために、実は公的な補助金制度が存在することをご存知でしょうか。これは、故人が加入していた公的な健康保険から、葬儀費用の一部が支給されるという制度です。この制度は、日本国民が何らかの公的医療保険に加入していることを前提としており、多くの人が給付の対象となり得ます。具体的には、故人が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入していた場合は、市区町村から「葬祭費」という名目で補助金が支給されます。また、会社員や公務員などが加入する健康保険(社会保険)や共済組合の場合は、全国健康保険協会(協会けんぽ)や各健康保険組合から「埋葬料」または「埋葬費」という形で給付されます。支給される金額は、加入していた保険の種類や自治体によって異なりますが、数万円単位の給付が受けられるため、ご遺族にとっては決して小さくない助けとなるはずです。しかし、これらの補助金は、ご遺族が自ら申請しなければ受け取ることはできません。自動的に振り込まれるものではなく、申請手続きをしなければ、受け取る権利があったとしても失効してしまいます。そして、この申請には「葬儀の翌日から二年以内」という時効が設けられています。葬儀後の慌ただしさや深い悲しみの中で、手続きを忘れてしまうケースも少なくないのが実情です。葬儀という大きな出来事に際して、国や自治体からの支援があるという事実を知っておくこと。それだけで、心の負担、そして経済的な負担を少しでも軽くすることができます。まずは、こうした制度の存在を認識し、自分たちが対象となる可能性があることを知ることが、賢く、そして心穏やかに故人を見送るための第一歩となるのです。