私がこの道を志すきっかけとなったのは、祖母の葬儀でした。当時、私はまだ学生で、人の死というものをどこか遠い世界のことのように感じていました。しかし、優しかった祖母が動かなくなり、家族が深い悲しみに包まれる中で行われた葬儀は、私の価値観を根底から揺さぶる体験となりました。その中心にいたのが、一人の葬儀プランナーの方でした。彼は、祖母が生前、庭の花を育てるのが大好きだったという母の些細な一言を覚えていて、祭壇を祖母が愛した季節の花でいっぱいに飾ることを提案してくれました。また、告別式の最後には、祖母が好きだった歌を静かに流し、参列者全員で思い出を語り合う時間を作ってくれたのです。それは、ただ決められた儀式をこなすだけの葬儀ではありませんでした。祖母の人柄が偲ばれる、温かく、そして心からの感謝を伝えられる空間がそこにはありました。式の後、悲しみに沈みながらもどこか晴れやかな顔で「おばあちゃんらしい、良いお葬式だったね」と涙ぐむ母の姿を見た時、私は人の最期に寄り添うこの仕事の尊さを知りました。そして、感動と共に強い憧れを抱いたのです。私も、あのプランナーさんのように、悲しんでいる人の心に光を灯せるような仕事がしたい、と。大学卒業後、私は迷わず葬儀社への就職を決めました。もちろん、現実は甘くありません。覚えるべき知識は膨大で、精神的にも肉体的にも厳しい毎日です。しかし、祖母の葬儀で感じたあの温かい光景が、常に私の心の支えとなっています。そして今、私は「葬祭ディレクター」の資格取得に向けて勉強を始めました。あの日、私達家族を支えてくれたプランナーさんのように、確かな知識と技術、そして温かい心を持った専門家になるために。これは、私にとって単なるキャリアアップのための資格ではありません。天国の祖母と、そしてこれから出会うであろうご遺族への、私の誠実な誓いなのです。