葬儀の日程を決定する上で、最も大きな制約となるのが火葬場の予約状況です。特に、火葬場の数が限られている都市部では、亡くなる方の数に対して火葬のキャパシティが追いついておらず、希望の日に予約が取れないことが常態化しています。この火葬場の混雑状況は、曜日と非常に密接な関係を持っています。最も予約が集中し、混雑が激しくなるのが「友引の翌日」です。前述の通り、多くの火葬場は友引を休業日としています。そのため、友引とその前日に亡くなった方々の火葬が、すべて友引の翌日にずれ込むことになるのです。葬儀社は、ご遺族から連絡を受けると、まずこの「友引明け」の予約枠を確保しようと一斉に動きますが、午前中の良い時間帯などは瞬く間に埋まってしまいます。結果として、火葬が午後遅くになったり、あるいは翌日以降にさらにずれ込んだりすることも珍しくありません。この現象は、大型連休明けや年末年始明けにも同様に見られます。連休中は火葬場の稼働が縮小されたり、親族が集まりにくいといった理由で葬儀を先延ばしにするケースが重なったりするため、連休明けに予約が殺到するのです。このように、火葬場の予約が数日先まで取れず、すぐに葬儀を行えない状態は「待機」と呼ばれ、近年社会的な問題にもなっています。この待機期間中、ご遺体は葬儀社の安置施設やご自宅で、ドライアイスなどを用いて適切な処置を施しながら安置されることになります。ご遺族にとっては、故人と過ごす時間が増えるという側面もありますが、同時に精神的な負担や安置費用の増加といった課題も生じます。葬儀の日程が、ご遺族の希望や故人の尊厳よりも、火葬場の「空き枠」というインフラの都合によって左右されてしまう。これは非常に悲しい現実です。曜日、特に友引という慣習が、火葬場の運営に直接的な影響を与え、結果として葬儀全体のスケジュールを大きく規定しているのです。葬儀の日程を考える際には、このような火葬場の曜日による混雑サイクルを念頭に置いておく必要があります。