葬儀業界で最も広く認知されている専門資格が、厚生労働省が認定する技能審査制度である「葬祭ディレクター技能審査」です。この資格は、葬儀業界で働く人々にとって一つの目標であり、専門性の高さを証明する重要な指標とされています。この資格には、実務経験に応じて二つの級が設けられています。まず「二級」は、葬祭実務経験を二年以上有する者が受験対象となり、個人葬における一連の業務を遂行できるレベルが求められます。一方、「一級」は、実務経験五年以上が条件となり、個人葬に加えて社葬や団体葬といった、より大規模で複雑な葬儀全般を取り仕切るための高度な知識と技能が問われます。試験内容は、知識を問う「学科試験」と、技術を問う「実技試験」の二本立てで構成されており、両方に合格して初めて資格認定となります。学科試験では、葬儀の歴史や文化、各宗教の儀礼、公衆衛生、関連法規、社会人としての一般常識など、非常に幅広い分野から出題されます。付け焼き刃の知識では到底太刀打ちできない、体系的な学習が不可欠です。そして、この試験の最大の特徴とも言えるのが実技試験です。実技試験は、さらに「幕張」「司会」「接遇」「実技筆記」の四つのパートに分かれています。例えば「幕張」では、規定時間内に指定された通りに祭壇の背景となる布を美しく張る技術が試されます。しわなく、均等にひだを作り出すには、熟練の技と正確さが求められます。「接遇」では、遺族役の試験官を相手に、打ち合わせのロールプレイングを行います。悲しみに暮れる遺族への言葉遣い、共感的な傾聴の姿勢、そして適切な提案力といった、まさに葬儀プランナーの核心ともいえるコミュニケーション能力が厳しく評価されるのです。このように、葬祭ディレクター技能審査は、知識と技術、そして人間性のすべてを問われる、非常に実践的な資格試験なのです。
葬祭ディレクター技能審査の実際