自営業者や退職された方、その扶養家族などが加入する「国民健康保険」、または七十五歳以上の方が加入する「後期高齢者医療制度」。これらの保険に故人が加入していた場合、葬儀を行った喪主に対して、お住まいの市区町村から「葬祭費」という補助金が支給されます。これは、葬儀費用の負担を軽減することを目的とした、非常に重要な公的制度です。まず、支給される金額ですが、これは全国一律ではなく、自治体によって異なります。一般的には三万円から七万円程度が相場となっており、東京都二十三区では一律七万円、横浜市や大阪市、名古屋市など多くの政令指定都市では五万円が支給されます。この金額の差は、各自治体の財政状況や条例によって定められています。ご自身がお住まいの自治体でいくら支給されるのかは、市区町村のウェブサイトや役所の窓口で確認することができます。次に、この葬祭費を申請できるのは、原則として「葬儀を主宰した人(喪主)」です。申請の際には、自分が喪主であることを証明する必要があるため、葬儀社の発行する領収書や会葬礼状など、喪主の氏名が記載された書類が求められます。申請手続きを行う窓口は、故人が住民票を置いていた市区町村の役所(国民健康保険課や保険年金課など)です。申請に必要な書類は自治体によって若干異なりますが、一般的には以下のものが求められます。・故人の国民健康保険証(または後期高齢者医療被保険者証)・葬祭費支給申請書(役所の窓口で入手)・死亡の事実が確認できる書類(死亡診断書のコピーなど)・喪主であることが確認できる書類(葬儀の領収書や会葬礼状など)・申請者(喪主)の本人確認書類(運転免許証など)・喪主名義の預金通帳など、振込先の口座情報がわかるもの・申請者の印鑑(認印で可)そして、最も注意すべき点が、申請期限です。葬祭費の申請権利は、葬儀を行った日の翌日から二年で時効となり、消滅してしまいます。葬儀後の様々な手続きに追われる中で忘れがちですが、権利を失わないためにも、葬儀が終わって少し落ち着いたら、できるだけ早めに手続きを行うことを強くお勧めします。この制度を知り、活用することで、少しでも心穏やかに故人様を送り出す一助となるはずです。
国民健康保険から支給される「葬祭費」